トヨタ自動車、ソニー、東芝……社長のイスが揺れ動く
近年で今年ほど「社長の椅子」が揺れ動いた年はない。巨額赤字転落を受けて、トヨタ自動車、ソニー、東芝、日立製作所など名だたる大企業の社長が続々とその座を退いた。一方で、「改革実現こそが(社長として果たすべき)経営責任」として指揮を執り続けるトップもいる。会社をよみがえらせるには、どちらの選択が近道なのか。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0903/31/news013.html
「業績悪化を招いたことに社長として大いに責任を感じている。ただ、交代は責任とは関係ないところで決めた」
東芝の西田厚聰社長(65)は、3月18日のトップ交代の記者会見でこう語った。西田氏が会長に退き、佐々木則夫副社長(59)が社長に昇格するが、西田氏はあくまで引責辞任ではないと主張した。
ただ、東芝は半導体事業の不振などで2009年3月期の連結最終損益が2800億円の赤字となる見通しで、財務も悪化している。
米原子力発電大手ウエスチングハウス(WH)買収や次世代DVD規格「HD DVD」の撤退など西田社長の決断力は評価が高かったが、市場の一部で西田路線に疑問の声が出始めているなかでの交代となる。
次期社長の佐々木氏は原発事業のキャリアが長く、WHの買収も担当。東芝のトップはかつて、電力設備などの「重電」出身者が就くケースが多かったことから、佐々木氏の就任は“本流回帰”ともいえる。
“退席”の流れに違う道
国内メーカーで過去最大規模となる7000億円の最終赤字を見込んでいる日立。古川一夫社長(62)が副会長に退き、日立マクセル会長の川村隆氏(69)が新社長に就任する。
川村氏も日立の主流の「重電」出身者。東芝、日立ともここ数代の社長はIT(情報技術)や営業出身者が目立ったが、本流回帰の道を選んだ。日立ではベテラン重視の布陣を敷く。
今期に1500億円の最終赤字を見込むソニーは、中鉢良治社長(61)が副会長に退き、ハワード・ストリンガー会長(67)が社長を兼務。「四銃士」(ストリンガー氏)と呼ばれる4人の40代を中心とした若手を経営幹部に登用し、スピーディーな経営を目指す。
トップが交代を決めた主な業績悪化企業
ストリンガー氏はソフトウエアやネットワーク重視を打ち出しており、「モノ作りが軽視されるのでは」(関係者)との懸念もある。
衝撃的だったのは日本のトップ企業トヨタだ。2008年3月期に1兆7000億円もの最終利益を稼ぎ出していたが、今期は一転、3500億円の赤字に転落する見通しとなっている。
そのトヨタは豊田章男副社長(52)が社長に就任する。創業家出身者がトップに就くのは14年ぶり。
赤字転落で“退席”が大きな流れとなるなか、違う道を選ぶトップもいる。
日産自動車は今期、2650億円の最終赤字に転落する見通しで、1990年代後半の経営危機からV字回復させたカルロス・ゴーン社長(55)の神話にも陰りが見えてきた。
目標を達成できなければ責任を取るとしてきたゴーン氏だが、今年2月の決算説明会では「株主の判断を仰ぐことになるが、適切なタイミングがあるので、そのときに考えたい」と述べるにとどめた。
前途多難の野村HD
証券最大手の野村ホールディングスは世界的な金融危機の影響で、2008年4-12月期に4923億円の巨額赤字を計上、通期でも2年連続の赤字となるのは確実だ。取締役と執行役の役員賞与をゼロ、役員報酬を2~3割程度減らすことで経営責任を明確化するとしているが、まだ就任約1年で続投することになる渡部賢一社長(56)の前途は多難だ。
2900億円の最終赤字となるNECの矢野薫社長(65)は1月30日の業績下方修正会見で「経営改革を完遂することこそ自分の任務」と、続投の意向を鮮明にしている。
「100年に一度の危機」のなか、潔く退く方がいいのか、それとも我慢強く改革を推し進めた方がいいのか。少なくとも、居残ってうまくいかなかった場合の反発がとてつもなく大きいことだけは間違いなさそうだ。
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