排出量取引で45社が目標公表、業界より削減に踏み込む企業も
政府が実施する「試行排出量取引スキーム」参加企業(業界参加の鉄鋼・自動車を除く)193社に削減目標などを尋ねた本誌の調査に65社が回答。各社とも排出量の変動に苦労しながら、踏み込んだ目標を検討している。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090630/332908/?ST=management
有効回答企業65社のうち、45社が試行排出量取引スキーム(試行制度)の参加に当たって昨年12月に自主的に設定した削減目標を公表した。一部を表にまとめた。なお、政府は各社の削減目標を公開していない。
図●目標を公開した企業(一部)
「実質生産高」とは、名目生産高を国内企業物価指数で補正したもの。「試行排出量取引スキーム」に企業単位で参加した193社にアンケート送付、65社から有効回答を得た。調査期間は3月23日~4月10日。今回の調査で目標を公開した企業45社の目標を、日経BP社の環境情報サイト「ECO JAPAN」で公開。URLはhttp://eco.nikkeibp.co.jp
[画像のクリックで拡大表示]
家電大手など電機・電子、化学、石油は一部を除いて目標非公開が目立つものの、産業機械や建設機械、流通、金融、航空、商社を中心に目標を公開した。また、業界目標から踏み込んだ目標を掲げた企業ほど、公表するケースが目立った。
不安定要因に戸惑いの声
NECは2008年度に、2007年度比でCO2の総量を20.3%削減するとの目標だ。電機・電子4団体の自主行動計画における業界目標は、「実質生産高CO2原単位」の2008~12年度の平均値を、90年度比で35%削減するというもの。総量目標に変えて、削減割合を大きくした点で、より踏み込んだ目標になった。
「ボイラー燃料をA重油からLPG(液化石油ガス)に転換するほか、運用改善による省エネチェックリストを作成して、従業員にチェック項目を達成するように働きかけた」(NEC)という。ただし、半導体製造部門の業績の冷え込みによるCO2排出量の縮小が、踏み込んだ目標を設定しやすくしたという事情もありそうだ。
一方、業界で目標設定の仕方に足並みがそろう傾向が強いが、航空2社は目標が異なることがわかった。
全日本空輸と日本航空が加盟している定期航空協会は、航空機燃料の使用により発生するCO2排出原単位を、2010年度までに90年度比で12%削減する目標を設定している。全日空は従来からの総量目標を使い、日航は原単位目標を深堀りした。
日航は、「国際線を含む業界目標と整合性をどう取るか、社内で議論した」と明かす。実は、定期航空協会の目標には国際線も含まれる。国土交通省は業界目標と整合性を取りながら実績以上の削減を求める一方、削減対象を国内に絞った。政府の求める水準に合う目標設定に苦慮した結果のようだ。
参加に当たって苦労した点を尋ねた質問への自由回答には、「経済の先行きが不透明な中での将来予測」(王子製紙、原単位目標)との回答が目立つ。「需要低下で稼働効率が悪化し、原単位も悪化するという見通しの中、目標設定に苦心した」(出光興産、原単位目標)との、原単位目標ならではの悩みも明らかになった。
排出量の算定に使う電力会社から購入する電力のCO2排出原単位は、原子力発電所の稼働で変動する。これも不満のタネになっている。
経済環境と原発という、目標達成の蓋然性を大きく左右する不安定な要素があるなか、業界目標の流用ではなく、多くの企業が踏み込んだ内容にしようと知恵を絞った様子が浮き彫りになった。試行制度は始まったばかりだが、企業単位の削減を促す仕組みとして一歩を踏み出し始めている。
(馬場 未希=日経エコロジー) [2009/07/02]
スポンサードリンク