欧州、原発回帰 環境面など評価 世論は懐疑的
欧州で「脱原発政策」からの転換が相次いでいる。連立協議を行っているドイツのキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)は15日、脱原発政策を撤回することで合意した。ベルギー政府も12日、脱原発政策の第1段階の開始を2015年から10年間遅らせることを決定した。その他の欧州諸国でも、既存の原子力発電所を更新したり、能力を増強する計画がある。原子力発電が見直されるなか、各国では論争が続いている。
http://www.business-i.jp/news/special-page/oxford/200910230008o.nwc
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≪分析≫
原子力発電所の「再生」は、地球温暖化対策とエネルギー安全保障という2つの挑戦への対応といえる。米スリーマイル島の原発事故(1979年)と旧ソ連チェルノブイリ原発事故(86年)以降、約20年間、原子力発電所の開発は減速し、原発技術を放棄した国もある。「緑の党」をはじめとする環境保護派政党が台頭し、国民投票で原発を停止した国(オーストリア、イタリア、スウェーデン)や政権樹立の連立合意で脱原発を決めた国(ベルギー、ドイツ)もある。
欧州の発電需要に占める原子力発電の割合は、最近20年間、12~14%で停滞していたが、脱原発政策により今後、段階的に縮小されていくことになっていた。
◆発電比率増加も
しかし、原子力産業界の要求やさまざまな政府の最近の方針転換によって、実際には、原子力エネルギーの比率は、すでに増加に転じている可能性も指摘されている。各国の政策転換の背景には、地球温暖化対策とエネルギー安全保障が考えられるが、より直接的な理由は政治的なものだ。
■ドイツ CDU・CSUを率いるメルケル首相は、社会民主党(SPD)との大連立でシュレーダー前首相(SPD)が決定した脱原発政策を維持していた。9月の総選挙で、SPDは大敗し、メルケル首相は大連立を解消して、中道リベラル政党FDPと連立を組むことになった。新政権は、2020年以降も原子力発電所の操業を継続しようとするだろう。
■ベルギー ベルギーでは、環境保護派政党が連立政権から離脱したことで、脱原発政策を転換する余地が生まれた。専門家委員会は、既存の原子力発電所の操業を25年まで延長する案を支持した。マニェット気候エネルギー相は、再生可能エネルギーの開発を支援するため、原子力発電業界の将来の収益に追加課税するという勧告の受け入れを表明した。
■スウェーデン スウェーデンでは1980年の国民投票以降、脱原発政策を推進してきたが、現在までに操業を停止したのはバーシェベック原子力発電所だけだ。政府は今年2月、二酸化炭素(CO2)を排出しない「クリーン・エネルギー」としての原発の価値を見直し、政策転換を打ち出した。
■イタリア チェルノブイリ原発事故の直後に行われた国民投票で原子力発電の廃止を決め、原発の新設を凍結し、90年にはすべての原発の運転を停止した。しかし、今年5月には、原発導入を促進するために、日本と原子力協力協定に署名。イタリア上院は今夏、原子力発電所建設計画を支持した。国営エネルギー企業ENELは8月、フランス電力公社(EDF)とイタリア国内の原子力発電所建設で合弁事業を始めることに合意した。
■英国 英国は原子力エネルギーを放棄したことはないが、00年代初めまで、原子力発電への関心は低かった。しかし、最近、さまざまな政府機関が原子力発電を支持する報告書を提出した。これは、政府が低炭素で効率の高いエネルギー源に補助金を出そうとする明確な兆候といえる。
■スペイン スペインは脱原発政策を守り続けている。ペドロ・マリン・エネルギー局長は、9月末、同国は十分な発電余力があるとし、原子力発電所の段階的廃止計画を再確認した。しかし、局長の言葉は近年の政府の行動と矛盾している。スペイン政府は、今夏、同国の最も古い原発の運転を13年まで延長することに同意した。さらに、12年の次期総選挙で保守派の国民党が勝利すれば、脱原発政策の転換はほぼ確実だ。
◆安全性と廃棄物
原発延命のコストは不透明だ。欧州市場で新型原子炉は一つも実験されていないため、仮に建設費用が上昇して完成が遅れれば、他のエネルギー技術に対して競争力を失う。排出量取引市場で、排出枠を上回った場合に購入しなければならない炭素価格が上昇すれば、相対的に原子力発電の魅力が増すと考えられるが、こうした状況は実現していない。原子力業界に対する、より直接的な補助金の必要性も認識されつつある。
原子力業界は環境に優しい産業に生まれ変わろうと熱心に技術革新に取り組んでいるものの、世論は原発に対してきわめて懐疑的なままだ。不安は、主に操業の安全性と廃棄物にある。とくに原子力発電所が新設される国では、反原発運動が復活する恐れがある。それが引き金となり、政治の世界で環境保護派政党の復活につながるかもしれない。
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≪結論≫
チェルノブイリ原発事故以降、欧州では段階的に原子力発電から脱却する政策が推し進められてきたが、地球温暖化対策やエネルギー確保の要請が各国の政治事情と結びつき、政府は原子力発電への支持を強める傾向にある。しかし、既存の原発延命が経済効率性に反したり、新規投資が滞った場合、国民に不信感が根強く残る原発に政府がどこまで強い支持を維持するか不確実だ。
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